青い三角形部屋

「この異端者よ!」

作画凝視#1 属性の配合

とにかく手を動かそうと思って何かおもろい作画を見かけるたびに適当に書いていこうと思った。

まず下のgifを見て、皆はこのキャラクターの動きをどう感じ取るだろうか?

私は100ループ以上凝視したが、理屈では回転かと推測できるが、視覚的に感性的にはとても回転に見えなかった。 ただ単純に「すごく動いてる」のと少しカオスで無機質的な感じがしました。

ある部位が2コマで大幅に位置を変えて、運動の方向も変えると、その部位が時空間における同一性が捉えにくくなったり図像の運動*1が固く見えたりするというのが自分の主観的経験だ。 この例でも、激しい動きの中でフレーム間の「アンカー」的なところが描かれている。

しかし平面的にある程度の連続性が保たれたとしても、回転を表現する「視覚的ヒント」が不十分であろう。ざっくり羅列してみると、

  • 両足はほとんどのフレームで横で並べられて、交差する動作が見て取れない
  • 手が大幅に動き回ったが、よくあることだが、この場合まず左/右手が左/右手である同一性が表現されないと、左手が向こうに回ったか元々向こうにある右手が見えたのかが見分けられない
  • 背中の肌色と水着の赤色が画面で入れ替え繰り返すの普通には重要なヒントになれるが、水着の影色が背景に近いのと暴れる手の肌色に撹乱されるので役をうまく果たせなかった

次に頭部の動きをみてみよう。

個人的には、頭部だけだが体の動きよりも明確に回転を認識できた気がする。 その理由は単純である。以下の一連のフレームを見れば、頭部が位置を大きく変えず、比較的に長い時間で、 髪と顔との月相みたいな相対位置の入れ替えで回転を見せたのがわかるだろう。

そして2つのgifを合体…元に戻すと、2つの属性の相乗効果、名付けて「属性の配合」が見られる。 つまり「カオスな回転」というイメージが生まれる。(この形容詞が適切でないかもしれないが、他に考え出せないだけで、気にしないでください)

この例がシンプルでとても「相乗」というほどには感じないかもしれないが、 作画は自由に時空間を操れるので、現実でありえない組合せで属性を配合し、新しい感覚を生み出すポテンシャルがあることは垣間見えるではないだろうか。 以前、写真作品で、真っ赤で硬質で宝石のような柘榴の上にヌルヌルでツルツルで活き活きしたタコを被らせたものを見たことあって、なんだかこの世界で今まで存在していない新しい感覚が生まれて、それと同時にゾッとした記憶がある。

*1:物の同一性と図像/図形の運動のスムーズさは等しくない。一致しないことは多々ある。この記事を参照。